Ark
『…彼女こそオレのマクシィなのだろうか…』
時は二月。
しんしんと雪が降りしきる頃。
「我々を楽園へ導くこの箱舟は、哀れな魂達をこの醜い大地から解き放ってくれるのです!
妹(ソロル)、救いを求める貴女にこのアークを授けましょう!」
頭を垂れた妹−ワムール−は、男からアークと呼ばれたそれ…ナイフを受け取った。
「…何故変わってしまったんだ?
あんなに…愛し合ってくれたのに…」
あの時裏切った兄−ウェルマ−を慈しみ、憎む。
涙を飲み込み少しばかり微笑んでみせる。
ナイフを握り、じりじりとウェルマに詰め寄っていく…
「さあ…楽園へ還ろう…フラーテル…!」
時は遡り、六月。
ざあざあと雨が降りしきる日。
ずっと信じていた、愛していたウェルマに「裏切られた」ワムールは、楽園と言う名を騙る信仰宗教へ入団した。
宗教にどっぷり嵌まったワムールを、ウェルマは見て見ぬ振りをした。
あの日、嘘をついてしまった自分を責めながら…。
二人はあの日、過ちを犯したのだ。
「被験体1096…通称『妹(ソロル)』が、同じく被験体1076、通称『兄(フラーテル)』を殺害しましたっす。
症例番号12…過剰投影型依存における袋小路の構型、則ち『箱舟依存進行』かと思われるっす。
以上、報告を終わるっす」
ウォッチャー;ロコが静かにマイクの電源を切った。
ロコの見上げる画面には
赤黒く染まったナイフを握り締めて佇むワムールと、血だまりの中に倒れ込み既に生を失ったウェルマが映っていた。
「一緒に楽園へ……還ろう…、ウェルマ…」
ぽつりと呟いたかと思うと、いきなりこちらを凝視するワムール。
「箱庭を騙る…ただの脆い檻の中で…
人の頭を…勝手に弄って…
神にでもなったつもりか……!!」
監視カメラに向かってそう叫ぶワムールの背後には…
いつの間にか『仮面の男』が立っていた…。
時は二月。
しんしんと雪が降りしきる頃。
「我々を楽園へ導くこの箱舟は、哀れな魂達をこの醜い大地から解き放ってくれるのです!
妹(ソロル)、救いを求める貴女にこのアークを授けましょう!」
頭を垂れた妹−ワムール−は、男からアークと呼ばれたそれ…ナイフを受け取った。
「…何故変わってしまったんだ?
あんなに…愛し合ってくれたのに…」
あの時裏切った兄−ウェルマ−を慈しみ、憎む。
涙を飲み込み少しばかり微笑んでみせる。
ナイフを握り、じりじりとウェルマに詰め寄っていく…
「さあ…楽園へ還ろう…フラーテル…!」
時は遡り、六月。
ざあざあと雨が降りしきる日。
ずっと信じていた、愛していたウェルマに「裏切られた」ワムールは、楽園と言う名を騙る信仰宗教へ入団した。
宗教にどっぷり嵌まったワムールを、ウェルマは見て見ぬ振りをした。
あの日、嘘をついてしまった自分を責めながら…。
二人はあの日、過ちを犯したのだ。
「被験体1096…通称『妹(ソロル)』が、同じく被験体1076、通称『兄(フラーテル)』を殺害しましたっす。
症例番号12…過剰投影型依存における袋小路の構型、則ち『箱舟依存進行』かと思われるっす。
以上、報告を終わるっす」
ウォッチャー;ロコが静かにマイクの電源を切った。
ロコの見上げる画面には
赤黒く染まったナイフを握り締めて佇むワムールと、血だまりの中に倒れ込み既に生を失ったウェルマが映っていた。
「一緒に楽園へ……還ろう…、ウェルマ…」
ぽつりと呟いたかと思うと、いきなりこちらを凝視するワムール。
「箱庭を騙る…ただの脆い檻の中で…
人の頭を…勝手に弄って…
神にでもなったつもりか……!!」
監視カメラに向かってそう叫ぶワムールの背後には…
いつの間にか『仮面の男』が立っていた…。
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