選択肢の無い未来だと分かっていても
『今日から貴女の……』
あのとき彼女は、とても不思議そうな双眸で私を見ていた。
そのとき私は、彼女のことを生まれ出づる以前より知っているような錯覚に捕らわれていた。
正反対の私と彼女。
性格も、外見も、趣味も、性別も。
様々なことを計算し尽くして、馬鹿の一つ覚えのように生真面目に自分の感情を殺した私にとって、不器用なまでに素直で邪気の無い彼女はとても眩しかった。
誰に言われるまでもなく彼女を最期まで守りぬこうと固く決めた。
・
・
・
「バルレイ」
「なんだい、ネリ」
「えっと、二人きりだし普通の話し方でお願い」
「承知しました。如何致しましたか?」
「なんだか私、あなたのことを、ずっと昔から知ってる気がするの」
「私はずっと昔からお嬢様のお傍におりますが」
「ううん、そうじゃなくて。あのときよりもっとずっと前から……なんでかしら、私とあなた、生まれる前から一緒にいる気がするの」
「それはまた面白い妄想ですね。確かに幼い時分より傍に居ますから、そう言った錯覚を抱くのも仕方無いのかもしれません」
「そうね」
「……お嬢様、如何かされましたか?」
「うん……ちょっとだけ不安なだけ。その、キィヤナさん……、私たちのこと怪しんでるようだったから」
「そうですね、彼はひどく家族思いです。それ故に家族以外のヒトには激しく敵対心を抱くようです」
「キィヤナさん、私のことをとても冷たい目で見るの。……慣れてないからかしら、ちょっと、怖い……」
「お嬢様」
「ごめんなさい。見た目でヒトを判断するなんて。キィヤナさん、本当は良い方だって分かってるの」
「お嬢様、良いんです」
「え……?」
「お嬢様のその手は、僭越ながら私が引かせて頂きます。貴女を導かせて頂きます。だからいくらでも迷いなさい、いくらでも悩みなさい。私はいつでも、いつまでも、貴女を守ります。貴女のことを、私は誰よりも理解しているつもりです」
「バルレイ……」
「誰よりもずっと輝く貴女を、私は知っていますから」
「誰よりもだなんて、そんなことない。でも、ありがとう」
「いえ。お嬢様の好きなようになさって下さい。ご両親もそれを望んでいます」
「ええ。バルレイ、私が迷ったらよろしくね」
「畏まりました、お嬢様」
いつまでも君とともに居よう
これは私自身の意思なんだ
あのとき彼女は、とても不思議そうな双眸で私を見ていた。
そのとき私は、彼女のことを生まれ出づる以前より知っているような錯覚に捕らわれていた。
正反対の私と彼女。
性格も、外見も、趣味も、性別も。
様々なことを計算し尽くして、馬鹿の一つ覚えのように生真面目に自分の感情を殺した私にとって、不器用なまでに素直で邪気の無い彼女はとても眩しかった。
誰に言われるまでもなく彼女を最期まで守りぬこうと固く決めた。
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「バルレイ」
「なんだい、ネリ」
「えっと、二人きりだし普通の話し方でお願い」
「承知しました。如何致しましたか?」
「なんだか私、あなたのことを、ずっと昔から知ってる気がするの」
「私はずっと昔からお嬢様のお傍におりますが」
「ううん、そうじゃなくて。あのときよりもっとずっと前から……なんでかしら、私とあなた、生まれる前から一緒にいる気がするの」
「それはまた面白い妄想ですね。確かに幼い時分より傍に居ますから、そう言った錯覚を抱くのも仕方無いのかもしれません」
「そうね」
「……お嬢様、如何かされましたか?」
「うん……ちょっとだけ不安なだけ。その、キィヤナさん……、私たちのこと怪しんでるようだったから」
「そうですね、彼はひどく家族思いです。それ故に家族以外のヒトには激しく敵対心を抱くようです」
「キィヤナさん、私のことをとても冷たい目で見るの。……慣れてないからかしら、ちょっと、怖い……」
「お嬢様」
「ごめんなさい。見た目でヒトを判断するなんて。キィヤナさん、本当は良い方だって分かってるの」
「お嬢様、良いんです」
「え……?」
「お嬢様のその手は、僭越ながら私が引かせて頂きます。貴女を導かせて頂きます。だからいくらでも迷いなさい、いくらでも悩みなさい。私はいつでも、いつまでも、貴女を守ります。貴女のことを、私は誰よりも理解しているつもりです」
「バルレイ……」
「誰よりもずっと輝く貴女を、私は知っていますから」
「誰よりもだなんて、そんなことない。でも、ありがとう」
「いえ。お嬢様の好きなようになさって下さい。ご両親もそれを望んでいます」
「ええ。バルレイ、私が迷ったらよろしくね」
「畏まりました、お嬢様」
いつまでも君とともに居よう
これは私自身の意思なんだ
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