七夕小話…コウルイ&ヌヌ 「Galaxy」
「うわあー!すごいねー!?」
溢れんばかりの好奇心を抑え切れずに、コウルイは瞳を輝かせながら感嘆の叫びを口にした。
レルート達一行は、七夕である今宵に相応しい街へと辿り着いていた。
その街自体はありふれた小さな街であったが、街のシンボルともなっている大きな河がまさに七夕に相応しいものであった。
今目の前に広がる大きくて浅いその河は、特に規則性も無くばらばらと落ちているたくさんの白い小石が月明かりに反射してきらきらと光り輝いていた。
その光景は、人々に自ずと天の川を連想させる。
それが由来して、この河は皆に天の川と呼ばれていた。
コウルイ達もそれに漏れず、天の川を前にして皆息を飲んだのだった。
「すごいすごーい!!本当に天の川みたいにキラキラしてるね!!」
ばっさばっさと翼をはためかせて飛びながらコウルイが言う。
興奮のあまり狂ったように宙を飛び回るコウルイを見て、ラスターは苦笑した。
「綺麗なのは分かるけど、そのまま河ん中に墜落すんなよー?」
「あっははは!!しちゃうかもねー!?」
「洒落にならんってのー!!」
言わずもがな、河には小石が至るところに落ちているのだから墜落などしたら大惨事だ。
「…だから、入ったらダメだからな!」
そうラスターが叫んだ相手はコウルイではなく、今にも河へと爪先を浸そうとしていたヌヌである。
「なんでにゅ〜」
「今言った!今さっきに理由言ったばっかりだ!!」
「カタいこと〜、言うなよだんなァ〜↑」
「常識だよ!!バカ!」
「だってえ、ヨネだけ入るのずるいにゅ〜」
「は!?」
慌ててさっきまでコウルイのいた辺りを見ると、丁寧に揃えられたコウルイの赤い靴が川岸にちょこんと置いてあった。
ラスターの視界の端に、河に足を浸して水を蹴り上げて遊ぶコウルイの姿が写る。
しばしの間、呆れて言葉を失うラスターだったが、再び苦笑をしてヌヌの背中をぽんと押した。
「にゅー?」
「いーよ、行っといで。確かにコウルイだけじゃ不平等だよな」
「やたーぁ」
そう言うなり、元々裸足だったヌヌが河へと駆けていった。
幸い、小石たちは角が無く丸みを帯びていたのでヌヌは足を傷付けることが無かった。
それを確認するとラスターはため息をついて、隣でしゃがみ込んで小石を拾っているゆなのとラディアのほうを向いた。
「ゆなの、ラディア、宿へ戻ろうか。レルートが一人でいるし不安だ」
「え…、こ、コウルイたちはいいの…?」
「アイツらはまだまだ遊びたいだろうし先に戻ろう。コウルイはああ見えてもしっかりしてるから大丈夫だろうよ」
「う、うん…なの」
「…」
申し訳程度に柔らかに微笑んだゆなのがラディアの手を引っ張ってラスターの元へと駆けて行った。
「ほぉーら!ぬっさん、いっくよー!!」
そう言うや否や、コウルイが両手に水を掬えるだけ掬い、思いっきりヌヌへとかけた。
白い小石たちに気を取られていたヌヌは反応出来ずに頭から水を被ってしまう。
「にゃ〜〜っっ!!」
ふにゃりとした悲鳴をあげながら、ずぶ濡れになった頭を猫のようにぶんぶんと左右に振った。
「ふははー!!ぬっさん討ち取ったりだねー☆」
「にゅふふ〜、こんなもんじゃぬっさんやられんのだにゅ〜!!」
「な、なにぃ!?」
芝居じみた台詞を吐いて、コウルイは再び水を両手いっぱいに掬う。
にやり、と口角を怪しげに持ち上げて不敵に微笑むとまたも思い切り良くヌヌへと水をかけた。
ざばあ、と小気味よい音が辺りに響く。
「これならどうだあッ」
が、しかし、その水は空中でぴたりと動きを止めた。
「ちっちっちぃ〜♪」
制止した水の向こう側では、ヌヌが楽しげに両手の人差し指を左右に振っている。
釣られて自らの頭も左右にころころと振られていた。
「わ、ちょっとう!指はふっちゃだめだって…わああんっ!!」
「ちい〜〜♪」
ぴた、とヌヌの指が止まったと同時に、制止していた水が全てコウルイに向かって降り注いできた。
ヌヌが指を振った結果、今回は念力が発動したらしい。
慌てて翼を広げて飛んで逃げようとしたコウルイだったが、一足遅かったようだ。
思いっきり頭から水を被ってしまい、ヌヌと同じく全身ずぶ濡れ状態となった。
「ぶっ…はあ!もー、指ふっちゃダメって姐御がいっつも言ってるじゃんねー?」
「ちっちぃ、楽しいにゅ〜」
「僕は全然いいんだけどね!楽しいしw」
「しぃ〜!」
濡れ鼠となった二人は、お互いにお互いの無様な姿を見てひとしきり笑う。
「ふふ、あはは!ぬっさんはともかくー、僕はふつーに服着てるから濡らすつもりなかったんだけどねー」
「にゅう」
「こうなったらもうどうにでもなれだよね!」
「ね〜」
笑い合った二人は、縺れ合うようにして河の中へと倒れ込んだ。
コウルイがヌヌを押し倒すような形になり、二人して河の中で寝転がる。
仰向けのヌヌの腰にコウルイが手を回してむぎゅ、と抱きしめた。
水の低温とヌヌの体の程よい温度とを同時に感じ、コウルイはくすくすと笑う。
「ぬっさん、あったかいんだねー!」
「ヨネもにゅ〜v」
からからと笑うヌヌ。
上下に動くヌヌのお腹にコウルイが頬を乗せた。
…さあ、さあ、と血液の流れる音が聞こえる。
こんなに常識の無い、あまりに一般と掛け離れた彼女だって、自分と同じ「ヒト」なんだ。
なんとなくそんな当たり前のことを感じて、コウルイは瞳を閉じた。
…さあ、さあ…
ヌヌの性格からは想像できないような優しげな流水音。
それこそがまさにヌヌそのものを表しているような気がして、コウルイはヌヌを抱きしめている腕に少しだけ力を込めた。
「ふふふ、姐御に怒られちゃうね、だから止めたのにーってね」
「すたーがぷんぷーん〜」
月明かりに照らされた天の川の中に自分たちはいる。
なんだか、今なら何だって出来そうだって、そんな勘違いすら起こしそうなくらい気持ちいい。
「あっ!そーいや…七夕なのにお願いしてないねー!?」
「おっぱい大きくなりますよーにゅ〜♪」
「ぬっさんはじゅーぶんおっきいじゃんねw」
コウルイがふざけてヌヌの胸にほお擦りをする。
くすぐったそうに笑うヌヌを見て、コウルイは意地悪そうにけらけらと笑った。
「じゃあー、僕も胸がおっきくなりますよーにっ!!」
「それぇ、パクリだにゅ〜?」
「いーじゃんいーじゃん!」
…真ん丸のお月さまだけが、二人の少女を静観しているのだった。
溢れんばかりの好奇心を抑え切れずに、コウルイは瞳を輝かせながら感嘆の叫びを口にした。
レルート達一行は、七夕である今宵に相応しい街へと辿り着いていた。
その街自体はありふれた小さな街であったが、街のシンボルともなっている大きな河がまさに七夕に相応しいものであった。
今目の前に広がる大きくて浅いその河は、特に規則性も無くばらばらと落ちているたくさんの白い小石が月明かりに反射してきらきらと光り輝いていた。
その光景は、人々に自ずと天の川を連想させる。
それが由来して、この河は皆に天の川と呼ばれていた。
コウルイ達もそれに漏れず、天の川を前にして皆息を飲んだのだった。
「すごいすごーい!!本当に天の川みたいにキラキラしてるね!!」
ばっさばっさと翼をはためかせて飛びながらコウルイが言う。
興奮のあまり狂ったように宙を飛び回るコウルイを見て、ラスターは苦笑した。
「綺麗なのは分かるけど、そのまま河ん中に墜落すんなよー?」
「あっははは!!しちゃうかもねー!?」
「洒落にならんってのー!!」
言わずもがな、河には小石が至るところに落ちているのだから墜落などしたら大惨事だ。
「…だから、入ったらダメだからな!」
そうラスターが叫んだ相手はコウルイではなく、今にも河へと爪先を浸そうとしていたヌヌである。
「なんでにゅ〜」
「今言った!今さっきに理由言ったばっかりだ!!」
「カタいこと〜、言うなよだんなァ〜↑」
「常識だよ!!バカ!」
「だってえ、ヨネだけ入るのずるいにゅ〜」
「は!?」
慌ててさっきまでコウルイのいた辺りを見ると、丁寧に揃えられたコウルイの赤い靴が川岸にちょこんと置いてあった。
ラスターの視界の端に、河に足を浸して水を蹴り上げて遊ぶコウルイの姿が写る。
しばしの間、呆れて言葉を失うラスターだったが、再び苦笑をしてヌヌの背中をぽんと押した。
「にゅー?」
「いーよ、行っといで。確かにコウルイだけじゃ不平等だよな」
「やたーぁ」
そう言うなり、元々裸足だったヌヌが河へと駆けていった。
幸い、小石たちは角が無く丸みを帯びていたのでヌヌは足を傷付けることが無かった。
それを確認するとラスターはため息をついて、隣でしゃがみ込んで小石を拾っているゆなのとラディアのほうを向いた。
「ゆなの、ラディア、宿へ戻ろうか。レルートが一人でいるし不安だ」
「え…、こ、コウルイたちはいいの…?」
「アイツらはまだまだ遊びたいだろうし先に戻ろう。コウルイはああ見えてもしっかりしてるから大丈夫だろうよ」
「う、うん…なの」
「…」
申し訳程度に柔らかに微笑んだゆなのがラディアの手を引っ張ってラスターの元へと駆けて行った。
「ほぉーら!ぬっさん、いっくよー!!」
そう言うや否や、コウルイが両手に水を掬えるだけ掬い、思いっきりヌヌへとかけた。
白い小石たちに気を取られていたヌヌは反応出来ずに頭から水を被ってしまう。
「にゃ〜〜っっ!!」
ふにゃりとした悲鳴をあげながら、ずぶ濡れになった頭を猫のようにぶんぶんと左右に振った。
「ふははー!!ぬっさん討ち取ったりだねー☆」
「にゅふふ〜、こんなもんじゃぬっさんやられんのだにゅ〜!!」
「な、なにぃ!?」
芝居じみた台詞を吐いて、コウルイは再び水を両手いっぱいに掬う。
にやり、と口角を怪しげに持ち上げて不敵に微笑むとまたも思い切り良くヌヌへと水をかけた。
ざばあ、と小気味よい音が辺りに響く。
「これならどうだあッ」
が、しかし、その水は空中でぴたりと動きを止めた。
「ちっちっちぃ〜♪」
制止した水の向こう側では、ヌヌが楽しげに両手の人差し指を左右に振っている。
釣られて自らの頭も左右にころころと振られていた。
「わ、ちょっとう!指はふっちゃだめだって…わああんっ!!」
「ちい〜〜♪」
ぴた、とヌヌの指が止まったと同時に、制止していた水が全てコウルイに向かって降り注いできた。
ヌヌが指を振った結果、今回は念力が発動したらしい。
慌てて翼を広げて飛んで逃げようとしたコウルイだったが、一足遅かったようだ。
思いっきり頭から水を被ってしまい、ヌヌと同じく全身ずぶ濡れ状態となった。
「ぶっ…はあ!もー、指ふっちゃダメって姐御がいっつも言ってるじゃんねー?」
「ちっちぃ、楽しいにゅ〜」
「僕は全然いいんだけどね!楽しいしw」
「しぃ〜!」
濡れ鼠となった二人は、お互いにお互いの無様な姿を見てひとしきり笑う。
「ふふ、あはは!ぬっさんはともかくー、僕はふつーに服着てるから濡らすつもりなかったんだけどねー」
「にゅう」
「こうなったらもうどうにでもなれだよね!」
「ね〜」
笑い合った二人は、縺れ合うようにして河の中へと倒れ込んだ。
コウルイがヌヌを押し倒すような形になり、二人して河の中で寝転がる。
仰向けのヌヌの腰にコウルイが手を回してむぎゅ、と抱きしめた。
水の低温とヌヌの体の程よい温度とを同時に感じ、コウルイはくすくすと笑う。
「ぬっさん、あったかいんだねー!」
「ヨネもにゅ〜v」
からからと笑うヌヌ。
上下に動くヌヌのお腹にコウルイが頬を乗せた。
…さあ、さあ、と血液の流れる音が聞こえる。
こんなに常識の無い、あまりに一般と掛け離れた彼女だって、自分と同じ「ヒト」なんだ。
なんとなくそんな当たり前のことを感じて、コウルイは瞳を閉じた。
…さあ、さあ…
ヌヌの性格からは想像できないような優しげな流水音。
それこそがまさにヌヌそのものを表しているような気がして、コウルイはヌヌを抱きしめている腕に少しだけ力を込めた。
「ふふふ、姐御に怒られちゃうね、だから止めたのにーってね」
「すたーがぷんぷーん〜」
月明かりに照らされた天の川の中に自分たちはいる。
なんだか、今なら何だって出来そうだって、そんな勘違いすら起こしそうなくらい気持ちいい。
「あっ!そーいや…七夕なのにお願いしてないねー!?」
「おっぱい大きくなりますよーにゅ〜♪」
「ぬっさんはじゅーぶんおっきいじゃんねw」
コウルイがふざけてヌヌの胸にほお擦りをする。
くすぐったそうに笑うヌヌを見て、コウルイは意地悪そうにけらけらと笑った。
「じゃあー、僕も胸がおっきくなりますよーにっ!!」
「それぇ、パクリだにゅ〜?」
「いーじゃんいーじゃん!」
…真ん丸のお月さまだけが、二人の少女を静観しているのだった。
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