七夕小話…キィ&ルック 【royal road】
そう、今宵は七夕である。
マックス家でも、毎年七夕には家族皆で短冊を手に願い事をするのだ。
もちろん今年も例外ではない。
居間に全員が集まり、それぞれ色とりどりの短冊とペンとを手に持ち、思い思いの願いを書いていた。
それ程考えている様子も無く書いているようで、マックスに至ってはここ4年間ずっと「メロンソーダ!!」と拙い文字で書いている。
果たしてメロンソーダをどうしたいのかは不明だが、メロンソーダへの愛情は感じられるのである。
「書き終わったら庭に笹があるから、そこにつけてね」
ナギサが5人に言った。
はーい、と元気な返事が聞こえた後にキィヤナ以外の全員が庭へと向かう。
キィヤナは未だにまっさらな自身の短冊をじっと見据えたまま動かなかった。
そんなキィヤナを見たルクセヌが庭に行きかけてユーターンして来る。
「まだ書いてねえの?」
キィヤナの隣に座り込み短冊を覗くルクセヌ。
「…ああ…何を書けばいいのか、毎年悩む」
「一昨年なんて、『ルック死ね』だったじゃねえかw」
「……冗談だ」
楽しそうに笑うルクセヌを一瞥し、キィヤナは再び目の前の短冊へと目を向けた。
水色の短冊。
たまたま手に取ったものが水色だっただけで、特に意識していた訳ではない。
しかし、その水色はひどく春夢を連想させた。
だからこそキィヤナは迷い、戸惑い、躊躇っていた。
「キィさ、そんな難しく考えなくていんだぜ?」
「…分かっては、いるんだ…」
「な、これ、俺の」
そう言ってぺらりと差し出された短冊は桃色。
ああ、やっぱりこいつには桃色が似合う、などとぼんやり考えながら書かれた文字を読んだ。
「……『キィの笑顔が見たい』……お前、な…」
「な?ラクーに考えりゃいーんだってw」
「……」
そういう問題ではないだろ、と思いつつも、今自分は元気づけられているのだと知ってため息をついた。
ルクセヌには自分の気持ちなど、何もかも見通されているのだ。
恐らく今、春夢のことを考えてしまっていることも。
「キィ、貸して。それ」
「…え?」
言うが早いか、ルクセヌはキィヤナの持っているペンをするりと奪い、机の上に置きっぱなしの水色の短冊を自分のほうへと引き寄せた。
そして勝手に何やら書き込んでいく。
「……」
「はい、出来たぜ!」
にかっと笑って意気揚々とキィヤナの目前に突き付けた短冊の文字を読み上げる。
「『家族が幸せでいられますように』…だろ?キィの願い事」
「……」
予想外の言葉に動揺するキィヤナ。
そんなキィヤナの様子を見て、ルクセヌは苦笑する。
「間違ってたか?」
「……ああ、間違ってるな」
「え!マジ?!」
慌てふためくルクセヌを見てキィヤナの動揺が薄れていく。
たまにはからかってやるのも面白いかもしれない。
…いや、からかって、じゃなくて…正しくは甘やかして、だろうな。
「……」
無言でルクセヌの手の内にあるペンを抜き取り、「家族」の文字の上に二重線を引いた。
その打ち消した文字の右隣に、新たに「ルック」と書き足す。
訂正し終わったキィヤナは軽く息を吐くと、ペンを机に置いてルクセヌに向き合った。
「…オレの願いは、『ルックが幸せでいられますように』」
「ほんと、キィってばたまに突拍子もねえことするよな…」
「……」
呆けているルクセヌを見て、その余りに間の抜けた表情に思わず頬が緩む。
「…お前…今の顔、鏡で見てみろ」
「……」
そんなキィヤナを見て、さらに呆けるルクセヌ。
「…俺の願い、叶うの早すぎだろ!」
「……オレだって笑わない訳じゃない。当然だろうが」
「そっ、か?」
そうしてルクセヌも笑った。
マックス家でも、毎年七夕には家族皆で短冊を手に願い事をするのだ。
もちろん今年も例外ではない。
居間に全員が集まり、それぞれ色とりどりの短冊とペンとを手に持ち、思い思いの願いを書いていた。
それ程考えている様子も無く書いているようで、マックスに至ってはここ4年間ずっと「メロンソーダ!!」と拙い文字で書いている。
果たしてメロンソーダをどうしたいのかは不明だが、メロンソーダへの愛情は感じられるのである。
「書き終わったら庭に笹があるから、そこにつけてね」
ナギサが5人に言った。
はーい、と元気な返事が聞こえた後にキィヤナ以外の全員が庭へと向かう。
キィヤナは未だにまっさらな自身の短冊をじっと見据えたまま動かなかった。
そんなキィヤナを見たルクセヌが庭に行きかけてユーターンして来る。
「まだ書いてねえの?」
キィヤナの隣に座り込み短冊を覗くルクセヌ。
「…ああ…何を書けばいいのか、毎年悩む」
「一昨年なんて、『ルック死ね』だったじゃねえかw」
「……冗談だ」
楽しそうに笑うルクセヌを一瞥し、キィヤナは再び目の前の短冊へと目を向けた。
水色の短冊。
たまたま手に取ったものが水色だっただけで、特に意識していた訳ではない。
しかし、その水色はひどく春夢を連想させた。
だからこそキィヤナは迷い、戸惑い、躊躇っていた。
「キィさ、そんな難しく考えなくていんだぜ?」
「…分かっては、いるんだ…」
「な、これ、俺の」
そう言ってぺらりと差し出された短冊は桃色。
ああ、やっぱりこいつには桃色が似合う、などとぼんやり考えながら書かれた文字を読んだ。
「……『キィの笑顔が見たい』……お前、な…」
「な?ラクーに考えりゃいーんだってw」
「……」
そういう問題ではないだろ、と思いつつも、今自分は元気づけられているのだと知ってため息をついた。
ルクセヌには自分の気持ちなど、何もかも見通されているのだ。
恐らく今、春夢のことを考えてしまっていることも。
「キィ、貸して。それ」
「…え?」
言うが早いか、ルクセヌはキィヤナの持っているペンをするりと奪い、机の上に置きっぱなしの水色の短冊を自分のほうへと引き寄せた。
そして勝手に何やら書き込んでいく。
「……」
「はい、出来たぜ!」
にかっと笑って意気揚々とキィヤナの目前に突き付けた短冊の文字を読み上げる。
「『家族が幸せでいられますように』…だろ?キィの願い事」
「……」
予想外の言葉に動揺するキィヤナ。
そんなキィヤナの様子を見て、ルクセヌは苦笑する。
「間違ってたか?」
「……ああ、間違ってるな」
「え!マジ?!」
慌てふためくルクセヌを見てキィヤナの動揺が薄れていく。
たまにはからかってやるのも面白いかもしれない。
…いや、からかって、じゃなくて…正しくは甘やかして、だろうな。
「……」
無言でルクセヌの手の内にあるペンを抜き取り、「家族」の文字の上に二重線を引いた。
その打ち消した文字の右隣に、新たに「ルック」と書き足す。
訂正し終わったキィヤナは軽く息を吐くと、ペンを机に置いてルクセヌに向き合った。
「…オレの願いは、『ルックが幸せでいられますように』」
「ほんと、キィってばたまに突拍子もねえことするよな…」
「……」
呆けているルクセヌを見て、その余りに間の抜けた表情に思わず頬が緩む。
「…お前…今の顔、鏡で見てみろ」
「……」
そんなキィヤナを見て、さらに呆けるルクセヌ。
「…俺の願い、叶うの早すぎだろ!」
「……オレだって笑わない訳じゃない。当然だろうが」
「そっ、か?」
そうしてルクセヌも笑った。
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