キミみたい
「…あれ?」
自分の家の扉の鍵を開けて玄関へと足を運び、そこでマカは不思議そうな声を漏らして足を止めた。
『ん、なんかいい香りすんな』
「うん…なんだろ、バナナ…? バニラ…かな?」
裏の驚く声とマカのきょとんとした声。
二人にそんな声を出させた原因は、居間のほうから漂ってくる甘ったるい香りだった。
こんな甘い香りが充満するような芳香剤などは置いていない。
慌てて靴を脱いで急ぎ足で居間へと向かうマカ。
勢いに任せて少々乱暴に居間の扉を開けた。
「アルトナ!」
「び、ビックリしたー…」
「もー、それはこっちのセリフだよ!」
そこにはテーブルに向かって胡座をかき、読書をするアルトナがいた。
あ、勝手にごめんな、と申し訳なさそうな顔で頭をかきながら呟くアルトナ。
しかしアルトナはマカの家の合い鍵をマカ本人から渡されている為、ここにアルトナが座っていることは何らおかしいことではないのである。
「鍵がかかってたし…すごく甘い香りがしてきて…何があったのかと思っちゃった」
「はは、マカへのサプライズなんだ」
アルトナは苦笑しながらテーブルの上に目線を向ける。
テーブル上には、ちょこんとおいしそうなブラウンのシフォンケーキとふわりとした生クリームが小さな白いお皿に乗って、二人ぶん置いてあった。
「シフォンケーキ…?」
「そう。いとこがバイト先の余り物を貰ってきてくれたからマカにも分けようと思って」
「そんな…えへへ、ありがとう」
マカが照れたように笑う。
いそいそとアルトナの隣に正座を崩した形で座り、まじまじと目前のシフォンケーキを眺めた。
「ほんとにいい香り…。玄関にいたときはバニラかなって思ったんだけど、これって紅茶の香り…かな」
「うん。紅茶味のシフォンケーキなんだってさ。有名なケーキ屋のだから味には自信あるぜ」
「ふふ、アルトナが作った訳でもないのに!」
口に右手を当ててくすくすと笑うマカを見て、アルトナも一緒になって笑い合った。
アルトナが帰宅した後もマカの家にはしばらくの間、甘い芳香が漂っていた。
甘い、優しい、
それはまるで。
自分の家の扉の鍵を開けて玄関へと足を運び、そこでマカは不思議そうな声を漏らして足を止めた。
『ん、なんかいい香りすんな』
「うん…なんだろ、バナナ…? バニラ…かな?」
裏の驚く声とマカのきょとんとした声。
二人にそんな声を出させた原因は、居間のほうから漂ってくる甘ったるい香りだった。
こんな甘い香りが充満するような芳香剤などは置いていない。
慌てて靴を脱いで急ぎ足で居間へと向かうマカ。
勢いに任せて少々乱暴に居間の扉を開けた。
「アルトナ!」
「び、ビックリしたー…」
「もー、それはこっちのセリフだよ!」
そこにはテーブルに向かって胡座をかき、読書をするアルトナがいた。
あ、勝手にごめんな、と申し訳なさそうな顔で頭をかきながら呟くアルトナ。
しかしアルトナはマカの家の合い鍵をマカ本人から渡されている為、ここにアルトナが座っていることは何らおかしいことではないのである。
「鍵がかかってたし…すごく甘い香りがしてきて…何があったのかと思っちゃった」
「はは、マカへのサプライズなんだ」
アルトナは苦笑しながらテーブルの上に目線を向ける。
テーブル上には、ちょこんとおいしそうなブラウンのシフォンケーキとふわりとした生クリームが小さな白いお皿に乗って、二人ぶん置いてあった。
「シフォンケーキ…?」
「そう。いとこがバイト先の余り物を貰ってきてくれたからマカにも分けようと思って」
「そんな…えへへ、ありがとう」
マカが照れたように笑う。
いそいそとアルトナの隣に正座を崩した形で座り、まじまじと目前のシフォンケーキを眺めた。
「ほんとにいい香り…。玄関にいたときはバニラかなって思ったんだけど、これって紅茶の香り…かな」
「うん。紅茶味のシフォンケーキなんだってさ。有名なケーキ屋のだから味には自信あるぜ」
「ふふ、アルトナが作った訳でもないのに!」
口に右手を当ててくすくすと笑うマカを見て、アルトナも一緒になって笑い合った。
アルトナが帰宅した後もマカの家にはしばらくの間、甘い芳香が漂っていた。
甘い、優しい、
それはまるで。
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