untragicomedy【現代パラレル@キィ&ルック】
仕事が案外早く上がったキィヤナは、職場の近くの行き着けの本屋に一人で訪れていた。
好んで読んでいる作家の小説のひとつがつい最近ドラマ化したおかげで、マイナーで中々書店に並んでいなかった小説まで発売しだしたのだ。
探せど探せど見つからなかった為、諦めかけていたというのにこの僥倖。
元々テレビはニュース以外あまり見ないのでドラマに興味は無いが、この作家のドラマは見るようにしている。
(…しかし…よりによって恋愛ドラマとは)
甘いラブコメディと言う訳では無い。
どちらかと言うとシリアスな悲恋物なのだが、キィヤナは極端に恋愛ドラマや恋愛小説に距離を感じるのである。
流石に一人で見るには自分の矜持が耐えられず、ルクセヌと二人で見ることにしている。
(それもそれで居心地は悪いが…。…結構壮絶なラストだったが、あいつは泣かないだろうか)
自分だけストーリーからラストシーンまで全て知っているのだという些細な優越感に浸り、少しだけ頬を緩めて笑う。
(あ、あった)
ぴたりと足を止めて視線を向けた先には、例の作家の小説が置かれている棚があった。
その棚の隅のほうには長年探し続けた小説が申し訳程度に並べられている。
キィヤナが嬉しさを噛み締めながらゆっくりと右手でその小説の背を掴もうとした、その時。
「……ッ!?」
ズボンのポケットに入れていた携帯電話が突如震え出した。
盛大に双肩をびくつかせたキィヤナは眉をひそめて、恥ずかしさに軽くほてった頬を左手で隠しつつ携帯を開く。
画面には『新着メール 1件』の文字が表示されていた。
おもむろに受信メールを開いてみると、そこには見慣れた名前とハイテンションな文章があった。
『5限の講義
休講になったんだけど!
マジうれしー♪
つーワケで、
今日の夕飯は俺が作ります!
ルクセヌ』
しばらく無言でそのメールを眺めたキィヤナは、苦笑するようにため息をついた。
左手で小説を掴んだまま、即座にメールの返事を返す。
『奇遇だな
こっちももう上がった』
送信し終えて携帯を閉じ、再びズボンのポケットにしまい込む。
入れ代わりに財布を出してレジへと向かう。
ちょうど購入し終わった頃に再び携帯が振動して、新しくメールを受信したことをキィヤナに伝えた。
本屋を後にしながら携帯を開くと、先程と同じ相手からの新着メール。
『まじで!?
はやっ!!
せっかくだしたまには外食でもする??
つーか、俺がしてえんだけど!』
(……すっかり忘れてるな…)
家に向かって歩きながら、呆れ顔で返事を返す。
『運が悪かったな
今日は駄目だ
見たいドラマがある』
送信完了の画面を見届けてから、携帯をぱちんと閉じてまたズボンのポケットに仕舞った。
見なくても分かる、どうせあいつの返事は「あ!忘れてたー!!」だろう。
あのドラマの結末は、主人公の女が好きになった男と付き合い始めるというもの。
しかし主人公は本当の自分の気持ちを完全には理解していなかった。
幸せになれたようで実は間違った相手を選んでしまったのだ。
…小説だと、後に主人公が男に暴行を受けて自殺するというような未来が仄めかされて終わっている。
(…あいつは、泣くだろうか?まだまだ子供だからな)
そこまで考えたところで、携帯が振動して新着メールの存在を告げる。
片手で携帯を開いて受信メールを開くと、
『あ!
忘れてたー!!』
想像通りの文章がそこにあった。
好んで読んでいる作家の小説のひとつがつい最近ドラマ化したおかげで、マイナーで中々書店に並んでいなかった小説まで発売しだしたのだ。
探せど探せど見つからなかった為、諦めかけていたというのにこの僥倖。
元々テレビはニュース以外あまり見ないのでドラマに興味は無いが、この作家のドラマは見るようにしている。
(…しかし…よりによって恋愛ドラマとは)
甘いラブコメディと言う訳では無い。
どちらかと言うとシリアスな悲恋物なのだが、キィヤナは極端に恋愛ドラマや恋愛小説に距離を感じるのである。
流石に一人で見るには自分の矜持が耐えられず、ルクセヌと二人で見ることにしている。
(それもそれで居心地は悪いが…。…結構壮絶なラストだったが、あいつは泣かないだろうか)
自分だけストーリーからラストシーンまで全て知っているのだという些細な優越感に浸り、少しだけ頬を緩めて笑う。
(あ、あった)
ぴたりと足を止めて視線を向けた先には、例の作家の小説が置かれている棚があった。
その棚の隅のほうには長年探し続けた小説が申し訳程度に並べられている。
キィヤナが嬉しさを噛み締めながらゆっくりと右手でその小説の背を掴もうとした、その時。
「……ッ!?」
ズボンのポケットに入れていた携帯電話が突如震え出した。
盛大に双肩をびくつかせたキィヤナは眉をひそめて、恥ずかしさに軽くほてった頬を左手で隠しつつ携帯を開く。
画面には『新着メール 1件』の文字が表示されていた。
おもむろに受信メールを開いてみると、そこには見慣れた名前とハイテンションな文章があった。
『5限の講義
休講になったんだけど!
マジうれしー♪
つーワケで、
今日の夕飯は俺が作ります!
ルクセヌ』
しばらく無言でそのメールを眺めたキィヤナは、苦笑するようにため息をついた。
左手で小説を掴んだまま、即座にメールの返事を返す。
『奇遇だな
こっちももう上がった』
送信し終えて携帯を閉じ、再びズボンのポケットにしまい込む。
入れ代わりに財布を出してレジへと向かう。
ちょうど購入し終わった頃に再び携帯が振動して、新しくメールを受信したことをキィヤナに伝えた。
本屋を後にしながら携帯を開くと、先程と同じ相手からの新着メール。
『まじで!?
はやっ!!
せっかくだしたまには外食でもする??
つーか、俺がしてえんだけど!』
(……すっかり忘れてるな…)
家に向かって歩きながら、呆れ顔で返事を返す。
『運が悪かったな
今日は駄目だ
見たいドラマがある』
送信完了の画面を見届けてから、携帯をぱちんと閉じてまたズボンのポケットに仕舞った。
見なくても分かる、どうせあいつの返事は「あ!忘れてたー!!」だろう。
あのドラマの結末は、主人公の女が好きになった男と付き合い始めるというもの。
しかし主人公は本当の自分の気持ちを完全には理解していなかった。
幸せになれたようで実は間違った相手を選んでしまったのだ。
…小説だと、後に主人公が男に暴行を受けて自殺するというような未来が仄めかされて終わっている。
(…あいつは、泣くだろうか?まだまだ子供だからな)
そこまで考えたところで、携帯が振動して新着メールの存在を告げる。
片手で携帯を開いて受信メールを開くと、
『あ!
忘れてたー!!』
想像通りの文章がそこにあった。
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